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TOPICS

ハイムテキスタイル トレンド2022-23  ~ Heimtextile 2022 Spring より

6月21日~24日、フランクフルトでは Heimtextil 2022 Summer Special が開催されました。
 
ハイムテキスタイルは世界最大級のテキスタイル見本市ですが、コロナ禍により2020年1月の開催を最後に中止を余儀なくされていました。2年半の空白の後、この6月に変則的ではありますが、サマースペシャルとしてようやく再開にこぎつけました。
真冬の厳冬のドイツとは様相を異にした初夏のメッセ・フランクフルトは、心なしか人々の姿が軽やかに見えます。残念ながら私たち日本からの参加は叶いませんでしたが、そうした人々に向けてオンラインでの情報発信も充実させています。
 
そんな情報から見えてきたハイムテキスタイル トレンド2022-23についてご紹介していきます。
テーマは「Next Horizons」
「ハイムテキスタイル トレンド」は、見本市組織が主催するトレンドをテーマとした特設会場でのキュレーションです。そこで展示され発信される方向性やメッセージは、30年以上もの間、高い信頼と評価を得ています。トレンドセッターとして SPOTT trends & business が監修しています。
今年のテーマは、「Next Horizons」です。
これから私たちが向かっていくであろう方向を、地平線として4つ示しています。この地平線はSDG’Sのような達成すべき「明確な目標」という地点(ポイント)ではなく、私たちが視野を広げ試行錯誤しながら歩みを進めるための「マインドセット」なのだと位置づけています。
 
■  Deep Nature(ディープ・ネイチャー)
■  Hyper Nature(ハイパー・ネイチャー)
■  Beyond Identity(ビヨンド・アイデンティティ)
■  Empowered Identity(エンパワード・アイデンティティ)
取り上げられた4つのテーマ(地平線)のベースにあるのは「持続可能性」。サスティナブルは今を読み解くキーワードとして大きな影響力を持っています。
 
今私たちに降りかかっている気候変動や資源や環境問題に対峙するために、産業革命前の慎ましさへ遡ることではなく、経済発展を続けながら目下の問題を解決するという方法で、世界は持続可能な道を探り歩み始めています。
 
こうした背景は、私たちは何を好み何を求めるのかを半ば左右し、常にトレンド(潮流)に色濃く反映されていくと言えるでしょう。
Deep Nature ~自然と向き合う
4つの地平線の一つ目は、自然の理解と調和です。
 
自然界のバランスが崩れることで、私たちは大きな影響を受けます。自然と健全な関係を作っていくためには、まず自然を深く知り、理解し受け入れることが必要です。そして人と自然のバランスを再構築してゆかなければならないでしょう。
本物の素材、天然繊維、再生繊維。自然が作り出す素材に触れることや、日常的に自然素材を使っていた時代の知恵やローテクを新たに学ぶこと。そして、手つかずの質感、本来の色を味わうことで、私たちは自然を学び直し、自然界とのバランスを取り戻す力、親和力や共生力を育んでいくことが、これからも求められるでしょう。
「ディープ・ネイチャー」のエッセンスを含むテキスタイルは、
ジュート、亜麻、ヘンプ、リネン。草木染め、植物の皮、パームレザーやココナッツレザー。セルロースミクロフィブリル、マイセリウム(菌糸体)、バイオマス原料などです。
それぞれの技術も展示紹介されています。
「ディープ・ネイチャー」を象徴するカラーパレットは、柔らかい色合いと調和です。
自然と親和性があり、時の悠久さと人と自然のよりよい共生という願いを含んでいます。
Hyper Nature ~テクノロジーの可能性
二つ目の地平線は、テクノロジーとの融合です。
 
AR(拡張現実)の技術は身近になりつつあります。カメラで写している画像にCGの映像を重ねて表示すれば、そのCGが実在しているように見えます。競泳のレーンに国旗や速度を映し出す中継などスポーツxARもよく目にするようになりました。拡張現実はもはや現実になりつつあります。
テクノロジーと自然は相対するものではなく、その関係は日進月歩の技術革新の中で目まぐるしく変わっていきます。自然から得たインスピレーションや、これまで知られなかった自然の生態系や仕組みの発見を、テクノロジーを使ってまったく新しい方法で表現する。テクノロジーと自然を融合することで自然と再接続し、より良い世界へと成長させる検討が始まっています。
「ハイパー・ネイチャー」のエッセンスを含むテキスタイルは、
レスポンシブマテリアル、リサイクル化合物、デジタルテキスタイル、インテリジェントテキスタイル。機能性テキスタイル、ライトレスポンシブ機能、デジタルエコ染色、マイクロスコープストラクチャー、サーフェイスバイブレーション、流体パターン、テクニカルファイバーなどです。
聞いただけでは想像もつかない新しい技術が次々と生まれています。
「ハイパー・ネイチャー」を象徴するカラーパレットは、鮮やかな色と少しくぐもった色の組み合わせです。グラデーションで流れるようなカラーパレットは、イマーシブ・コンピューティング(没入型デジタル)を表現しています。
Beyond Identity ~属性にとらわれない
 三つ目の地平線は、ボーダーレスです。
 
ボーダー・レスという言葉は、「国と国の境界」というところから「社会的な境界」が消滅するという意味で用いられるようになりました。そうした境目を無くす動きは加速し、ジェンダーレスやエイジレスなど、生物学的や物理的属性に捕らわれることなく、それを超えたところに価値を見出そうと発想が共有されアイデンティティの多様性がうまれています。
既存の規範への反抗は、ソフトで力強く、未来への新しい価値観への構築という希望を含んでいます。価値観を時代とともに流動的なものにしていくことは持続可能という側面を有しています。そしてこうした動きは、デザインの中にあっては、「サスティナブル」が必ずしも素朴なものである必要はないという事を示唆してくれます。
 
「ビヨンド・アイデンティティ」のエッセンスを含むテキスタイルは、
リサイクル合繊、ナチュラルカラーテキスタイル、セルロースベース、プラスティック廃棄物。パッチドソフトネス、エアリーテクスチャー、天然ゴム、オーガニックコットン。ビンテージシルクとサテン、セカンドハンド生地、ビーガンファー、マイセリウムレザーなどです。
こうあるべき常識にとらわれない素材の組み合わせが新技術の支えにより生まれています。
「ビヨンド・アイデンティティ」を象徴するカラーパレットは、パステルカラーです。パステルカラーは、ふわふわと甘いというイメージではなく、強いエネルギーを柔らかく繊細に体現していく姿、そして絶え間なく変化する流動的な空気のように自由さを表現します。
Empowerd Identity ~職人技の継承
四つ目の地平線は、文化的レガシーへのリスペクトです。
 
様々な土地で生まれた工芸品は、私たちが大切に受け継いでいきたい文化的遺産です。文化を維持していくためには、文化的つながりにも持続可能なシステムを取り入れていく必要があります。職人技が継承されていかなければ、私たちの失うものは大きいでしょう。
職人技を守ることは、工芸品の未来の存続だけでなく変革や新たな開花の可能性につながります。手工芸のローカル色豊かなデザインは、未来の人たちに新しいインスピレーションを吹き込みます。過去の文化とのコラボレーションを促進することで、文化を次世代へとつなぎ発展が持続可能なものとなります。
 
「エンパワード・アイデンティティ」のエッセンスを含むテキスタイルは、
アップサイクル素材、デッドストック生地、リサイクルテキスタイル、ヘリテージテキスタイル。蜜蝋テキスタイル、羊毛織り、リサイクル合繊、刺繍アップリケ、タフティング、クロスステッチ、天然染色、バックストラップ織りなどです。
伝統技と今とのコラボレーションで新しいインスピレーションが生まれています。
「エンパワード・アイデンティティ」を象徴するカラーパレットは、馴染みがありながら新鮮味を感じる色相や彩度で構成されています。原色は、昔から使われてきた顔料へオマージュでテーマとなっている文化的遺産を表現しています。カラフルさは、明るくポジティブなメッセージとなっています。
PICK UP

展示会で発表された新作商品やコレクションを弊社取り扱いの海外ブランドと併せてご紹介いたします。

bella dura /  swavelle (アメリカ)

日光に晒される環境でも色褪せしにくい、水に濡れても不安がない、といった特色を持つアウトドア用ファブリックは、その繊維の持つ特性によりパフォーマンスが生まれています。

 

多くはアクリルやポリオレフィンなどが使用されます。どちらも一般の染料では染まりにくい素材であるため、糸になる前の段階で顔料等が練り込まれます。そのため逆に色落ちしにくいという特性を発揮します。加工上の弱点が強みに変えられています。

米国のテキスタイルエディター swavelle社から発売されている、アウトドア用テキスタイルブランド「bella dura」は、ポリオレフィンを使用したコレクションを展開しています。

 

ポリオレフィンの素材特性からくる耐摩耗性、耐薬品性、耐汚染性(耐カビ)、撥水性、リサイクル性などから、アウトドア用のみならずハイパフォーマンス生地としての使用も広まっています。汚れが気になる子供やペットと過ごす場所や、消毒を必要とする医療ケア分野でも人気を呼んでいます。

 

ニューヨークにヘッドオフィスを構えるswavelle社は、1982年の創業以来インテリアテキスタイルのサプライヤーとして幅広いコレクションを揃えるブランドへと成長してきました。2019年に bella duraブランドを傘下に収めアウトドアテキスタイルをビジネスの主軸に据え、新たな信頼と人気を獲得しています。

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